みなさんこんにちは。盲目のマルチプレイヤーの直也です。
連載の第1回ご覧いただけましたか?
具体的にどういう状況から声優を始めたのかがわかっておいたほうがいいと思って私のことを書かせていただきました。
第2回の今回は、養成所のオーディションを受けるに際して選択肢を持つということで、相手の出方はひとつではないということから、いくつか相手の出方によるこちらの行動パターンの例を書きます。
なお、私の経験の時系列的には養成所オーディションの前に短期セミナーがくるのですが、これについてはオーディションの後のレッスンの話をするときに合わせて書こうかと思っています。
目次
- 選択肢を持つ:養成所オーディション編
- 養成所オーディションの形態
- 事前に送られてきた台本を自分が読みやすいようにする
- 当日台本の場合は書き写せるように準備する
- 事務局とのまめなやり取りをする
- 断られるのは当たり前:ターゲットを一つにしない
- 事例:とある養成所のオーディション
- まとめ
- お問い合わせ先
選択肢を持つ:養成所オーディション編
声優になるには、まずは事務所に入らなければいけません。フリーで活動する選択肢もありますが、最初は事務所に入っておくのがいいでしょう。
これは我々視覚障害でも例外はなく、むしろ障害を持っているからこそ事務所に入る必要がありそうです。
ですが、養成所に入るにはほとんどの場合オーディションがあります。そのオーディションの段階から、視覚障害を持っていると苦戦を強いられることになります。
まずはオーディションの形態を紹介し、それにたいするいくつかの対策を述べます。
その後、じっさいにあった事例をもとに私の行動を紹介します。
養成所オーディションの形態
養成所のオーディションでは出願者の適性を判断するために様々なことが行われます。
場所によってはそこでの成績を踏まえて特待生(授業料免除・割引)であったり、飛び級(上のクラスからスタート)などの査定を行っていることもあります。
私が今まで受けた事務所2社、養成所ひとつも、それぞれオーディションと査定がありました。
オーディションで何を導入するかは事務所や学校によって様々です。
- 書類審査
- 面接
- 自己PR
- 課題セリフ
- 歌唱
などでしょうか。
某有名養成所では、漢字の筆記試験があるようです。
まず、自分が受けるところがどのようなオーディションを行っているかを調べておく必要があります。
そして、確認後に、そのオーディションを受けるためにはどのような配慮をしてもらう必要があるかを考え、事務局にメールか電話で問い合わせをするのが一番ベターなやりかたです。
では、次から具体的な対策を述べていきます。
事前に送られてきた台本を自分が読みやすいようにする
これはオーディションに限らず、仕事をするにあたって必要なことですが、台本が事前に送られてきた場合は自分が読みやすいようにしておきましょう。
私であれば点字に変換するのはもちろん、点字でよどみなく読めるように中身を加工します。
その準備をいかにしているかが、声優としての人生をどれだけ充実させられるかにかかってきます。
後述しますが、オーディションを受けられることそのものが、視覚障碍者にとっては貴重な機会です。
おそらく、そのような事務所ですから、多少は視覚障害が理由で台本をうまく読めなかったみたいなことが起きても多めに見てくれるとは思いますが、少なくとも査定は一番下になります。
さらにいえば、現場ではそれは通用しません。
自分にとって読みやすい台本は、自分で読んでみなければ作れません。私のように、間があるところで点字を改行するのもひとつの手です。
最初は大変かもしれませんが、なんども読んで変えてを繰り返しているうちに、自分が読みやすい台本のパターンが見えてきます。
万全の準備をして当日に臨みましょう。
当日台本の場合は書き写せるように準備する
とはいえ、実は事前に台本をもらえるオーディションは少ないです。代替が当日台本です。
当日台本の場合、
「視覚障害があるから事前に送ってほしい」
と要求してもおそらく通らないと思います。
というのも、おそらく審査員は初見台本を見る力も審査対象にしているため、不公平が生じてしまうからです。
私はそう思ったので、当日台本を事前に送ってほしいと要求したことはありません。
ではどうするかというと、当日スタッフに台本を読み上げてもらい、手元に書き写せばいいです。
養成所のオーディションで使われる台本は掛け合いでもないですし、わりと短めなものがおおいので、読んでもらって書き写すことは簡単にできます。
しかし、それをするには指定された面接時間に会場に行ったのでは間に合いません。
そこで、
「早めに行って台本を書き写す時間が欲しい。書き写すので台本を読み上げて欲しい」
と事務局に問い合わせをします。
すると、事務所はここまででこちらが視覚障害であることを理解していますから、ほとんどOKしてくれます。
もちろん、事務局的にスタッフ不足であることをという理由で許可されないかもしれませんが、その場合はこちらが付き添いを立てればいいでしょう。
付き添いを立てる場合は、あくまで、「代読してくれる人」ということを明示します。
そのようにしないと、付き添いの人が演技のアドバイスをすると思われる可能性もありますので。
代替ここまできていれば、障害を理由に落とされることはないでしょう。
障害を理由に落とすところはその前に出願そのものを拒否します。
事務局とのまめなやり取りをする
ここまで何度も書いていますが、オーディションを受ける場合は事務局とのやり取りが不可欠です。
事務所に入っていれば、マネージャーや担当になった人がバックアップしてくれることもあるでしょう。実際私の事務所はそうです。
ですが、養成所オーディションの場合は、自分でなんとかしなければいけません。そのためにも、不安なことがあれば事務局に連絡するのが大切です。
オーディションの内容については答えられないと言われてしまうかもしれませんが、何か気になったら問い合わせをしてみましょう。
なお、私の経験ですが、入所後に必要な配慮についても先に伝えておくといいでしょう。
そうすることによって、事務局側も受け入れ態勢のイメージがつきやすそうです。
私の場合はうかってから電話で打ち合わせしました。
断られるのは当たり前:ターゲットを一つにしない
私に問い合わせをしてくる人たちが言うのは、
「養成所に入所を断られてしまったため、声優はできないと思っていた」
ということです。
私もそれについてはたくさん経験があります。
ただ、この世界は断られるのが当たり前なんだということを何年も活動していて実感します。
養成所側にもいろいろな事情があったり、単純に視覚障害に理解がない、視覚障害について考えすぎている、などなどともかく断られる理由もいろいろです。
私にたいして断ってきた養成所の返事をまとめると、
- そのような制度がない
- 設備・スタッフ面で整っていない
- 扱っている案件がアニメ・外画が中心のためナレーションやゲーム分野での活動にサポートできない
という形になります。
上の二つに関しては、企業などにもある一般的な視覚障害への理解不足です。
ただ、3番目に関しては唯一まっとうな理由だと思います。これは、たとえばぼくが視覚障害ではなかったとしても、ナレーションやゲームで活躍する声優を目指していたとしたら落とす理由にも使えますから。
それで、いろいろな事情で断られるのはこの際もう当たり前です。
それでも、ぼくが通った養成所や、所属している事務所のように受け入れてくれるところもあります。ほかにも何社かいい返事をいただいていました。
選択肢をひとつにしないでください。たくさん事務所があって、何社もメールなり履歴書なり送ればいいと思います。
また、最初はだめでも、やり取りを重ねることで受け入れてくださるケースもあります。相手がどのような理由で断ってきたのかを見直しながら、代替案が提案できそうだったら積極的に提案してみましょう。
事例:とある養成所のオーディション
私は今まで養成所のオーディションを2回、事務所のオーディションというか面接を1回、ドラフトオーディションを1回受けています。
最後のドラフトに関しては、養成所の卒業オーディションという形態だったので、事務関連はすべて事務局任せでした。
しかし、それ以外は自分で連絡をとったものなので、やり取りはすべてひとりで行いました。
とある養成所に入所を考えたとき、その養成所のホームページを見ると、
1次審査:書類審査(願書・自己PR)
2次審査:面接(自己PR・課題セリフ・質疑応答)
とありました。
1次審査の書類の時点で、いくつか聞かなければいけないことがありました。
- 自己PRは手書きではなく印刷で良いのか
- 入所試験・入所後の配慮についてどう記載するか
養成所では聞いたことはありませんが、中には手書きの書類しか受け付けていないところもあります。まあ、その場合はきっと表記されているとは思いますが、念のために聞いておくべきでしょう。
そして、配慮してほしい事項がいくつかあると思いますが、大学入試などを経験した方ならわかる通り、特別措置の申請が別書類になっていることもあれば、会社に送る履歴書のように自己PRに明記する場合もあります。
おそらく前例がなければ事務局も考えてはいないと思いますが、特別措置の制度が万が一存在していたりしたら勝手な判断はよくないので、問い合わせてみましょう。
私の時は、自己PRの印刷は問題なしで、特別措置に関してはどちらの記入方法でもいいということでした。
これぐらいの問い合わせであれば、メールでも電話でもいいと思います。私は、その時はメールを使いました。
結局、出願書類の記入を父にお願いし、自己PRは自分でワードで書き、印刷したものを同封して郵送しました。
さて、めでたく書類が通れば2次審査に行くわけですが、その時に、内容を確認してから事務局とのやり取りを続けます。
台本が事前に送付されていれば自分の見やすい形式にし、そうでなければ、事務局に電話をして先に書き写す時間を作ってもらいます。
私の場合は、当日台本でしたので、事務局に電話して、事情を話したうえで書き写す時間を作ってもらいました。
実際当日に行ってみると、スタッフさんに会議室に通され、しっかり課題セリフの確認をすることができました。
やはり、自分がしてほしいことを相手にしっかり伝えるって大事ですね。
その後合格をいただき、入所後のやり方についてスタッフと電話で協議しました。これについては、後程別の回で書いていこうと思います。
あ、しゃれじゃないですよ。
まとめ
ここまで、オーディションの選択肢を増やすことについて伝えてきましたが、結局は、
- できることは自分で合わせる
- できないことは依頼する
- それで断られてもあきらめない
- わかってくれるところは必ずある
ということです。視覚障害だけではなく、いろいろな病気や障害に言えることですし、声優業界だけでなく、学校や会社、イベントなどにおいて言えることです。
また、断るところも断るなりの事情があったり、そもそも障碍者の使いどころを知らなかったり、実際できると思っていないというケースもあります。
そこは私たちが中心となって、「こんなこともこうすればできますよ」て中心になって伝えて、訴えていきたいと思います。
当事者が立ち上がることこそが法律を超えて世の中を動かすことだと思うので、ぜひ一緒に行動しましょう。
それでは、今後ともよろしくお願いします。
お問い合わせ先
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