脚本 「私たちは即席声劇チーム!第1話」

登場人物

yok (ヨク)
男。主人公。意思が弱く、遠慮がち。それでも持ってるものは高く、リーダーのロンデュから頼りにされている。頼りにされすぎて厳しくいわれることも。ソキー以外のことを信頼しつつ、ソキーの実力を認めている。
ROND (ロンデュ)
男。この組織のリーダー。突如集まった5人を指揮する。初参戦のヨクとソキーで対応を変えやすい。
mah (マー)
女。相談役。頭が良く、作戦を立てやすい。また、ロンデュも頭が上がらないため、チームの雰囲気調整ができる。
jas (ジャス)
男。ムードメーカー、とくに厳しくは言わず、とにかくチームの雰囲気を上げる。できないように見えて、急に力を発揮するところがベテランらしさを物語る。
soky (ソキー)
女。ヨクとともにチームに初選出された。毒舌だけど、若さとかわいさで大人からかわいがられる。だからか、同年齢のヨクにはひときわ厳しい。基本的に自分を持つことができ、大舞台でも動じない。ただし、チームプレイに難あり。

本編

ここは、とある稽古場。男女5人組が終結し、会議が始まろうとしている。どうやら、数カ月先に楽しいことがあるらしく、それに向けた会議なんだとか。

r 「それでは、4カ月後に迫った、組織対抗声劇大会に向けた第1回強化練習を始めます。チームリーダーのROND (ロンデュ)です。よろしくお願いします。どうやら、台本ではr と表記されるみたいです。じゃあ、隣」
一同 「おねがいします」
j 「はい、どうも。jas (ジャス)です。台本上では、jと表記されるらしいですよ。まあ、このなかではわりと和解位置のアルファベットなのに、実年齢は一番年上っていうね。よろしくおねがいします」
一同 「おねがいします」
r 「はい、次」
mah 「はい。mah(マー)です。ロンデュさんさあ、台本の表記はmでいいんだよね?」
r 「ああ、そうみたいですね」
m 「みたいです。よろしくお願いします」
一同 「おねがいします」
r 「はい、じゃあ次は?」
y 「お疲れさまです。初参加のyok(ヨク)です。表記はyです。よろしくお願いします」
r 「お前はまじめか!……おっと、すみません。初参加ね。よろしくお願いします」
一同 「よろしくおねがいします」
r 「では、最後に」
soky 「soky(ソキー)でーす。えっと、表記は、なんだっけ?」
r 「おっと、表記を忘れたときたか。まったく、sokyはかわいいなあ。君の表記はsだよ」
s 「あ、そっかあ。じゃあ、sで」
一同 「よろしくおねがいします」
r「ということで、自己紹介もすんだところで、今回はヨクとソキーが初参加ということなので、この団体がどんなものかをいったん説明します」
y「はい、お願いします」
r「まず、このチームで何をするかですが、そのまんま、声劇をします。」
s 「まあ、わたしたち、声優で選抜されてるからね。」
r 「そう。キャラクターなりナレーションなり、みんなで演技をして競い合うのがこの組織対抗声劇大会です。」
j 「べつに、演技って言っても感動的なものにこだわらず、笑いを入れてもいいし、ロンデュさんなんかはだいたいばかになってますし。」
r 「そうですね。個人線は台本の選定から自由です。ただし、4人ほどで演技して、会場の投票で1位になったものしか次には進めません」
y 「まじか。ハードですね。」
r 「でまあ、最後の1グループに残った人はその後の団体戦には出場できなくなっています。」
j 「ちなみに、団体戦は二人化3人でしか出られないから、もし、ロンデュさんとマーさんと、ヨク君と、ソキーさんが最後までいったら出場できないから。」
y 「なんか、いいのか悪いのか分からないっすねそれ。」
m 「まあ、賞は多いにこしたことはないから。で、団体戦の台本は見た?」
一同 「はい。」
r 「よし。一応、ここには男女の指定があって、男子一人、女子一人、ナレーションだけど、ひょっとしたらどちらかに偏ることもあるので、全員が全部を演じられるようにします。」
j 「女性がいないにしても、僕が女性やるよりはヨク君がやったほうが若さは出るかなと思うしね。」
y 「いやいや。ぼく、乙女心とかわからないんで。ていうか、それを見越して男性はわりと年齢高め、女性は低め設定ですか?」
r 「細かいことは気にするな!とにかく、全部の役を演じることができるように。ヨク、くれぐれもお釜はいらないからな。女やるならかわいくしろよ。」
y 「はい。任せてください。乙女心は今から女性人から学びます。」
m 「いや、そういう問題じゃないでしょ。これから皆で台本の読解とかして、準備してから演じるんだから、まずは男女の区別はせずに行こう。」
r 「そうですね。その辺も経験者を中心に確実に進めていきましょう。
よし!概要の説明が終わったところで、まずは個人の確認に入ろう。発声練習からだな。マーさん、あれでいいよね?」
m 「いいんじゃない。たぶん、みんななじみがありそうだし。」
r 「よし、まずはr式トレーニングその1!ダダン!あいうえおから1個ずつずらして発声!1文字を丁寧に!では、
はい、あいうえお」
一同 「あいうえお」
r 「いうえおあ」
一同 「いうえおあ」
r 「うえおあい」
一同 「うえおあい」
r 「えおあいう」
一同 「えおあいう」
r 「おあいうえ」
一同 「おあいうえ」
r 「と、一緒にやっていたら時間が足りないので、まあこれは家で各自やってくるように。」
m 「やらないんかいな。」
r 「やり方は教えるが、それを普段しっかりやるかどうかは、個々にかかっているということです。強化練習だけで伸びると思わないこと!聞いてるか?ヨク!」
y 「聞いてますよ。こういうのは積み重ねが大事ですからね。相手がいないにしてもちゃんとやらないと。」
r 「そういうことだな。困ったらいつでも相談に乗るから、ともかく日々の鍛錬を忘れないこと!」
一同 「はい。」
r 「では、トレーニングその2!ダダン!表現の練習!ここには5人のメンバーがいる。ということで、特定のセリフを、特定の誰かの真似をして言ってもらう。こうすれば、お互いにお互いの表現を取得できる。」
y 「難しそうだなあ。」
r 「よし!では、まずはヨク!」
y 「は、はい。」
r 「ソキーの真似をしてみろ!」
y 「え!?」
r 「セリフはこれだ!
『おはようございます。今日から1週間、お世話になります』
よし!さあ、いってみよう!」
y 「よし!俺はプロ!その力を込めて!
(ぶりっこでセリフ)」
ソキー以外 (笑)
s 「ええ?私そんなんなの?絶対違うってー!」
r 「ふん。リーダーとしてはノーコメントを貫きたいが、あえていうなら、ヨクはしっかり人の声を聞いているな。」
s 「それ、似てるって言ってるよねえ?」
r 「ソキー、自分がどう見られているかを知るときも必要だ。そういう微調整をすっ飛ばすから、気づけば周りに誰もいないという寂しい結末になってしまう」
s 「…」
r 「まあいいや。では、次。ソキー、俺の真似をしてみろ。」
s 「は!?」
r 「娘たるもの、パパの真似はできるよな?」
s 「いや、やだし。ていうか、誰が娘だし!!」
m 「まあまあ、付き合ってやんなよ。練習会なんだから。」
s 「う、うん……。じゃあ。
(かっこよくセリフ)」
一同 「おお」
y 「す、すげえ。ソキーさん、そんな声出せるのか。」
r 「すげえな。ここまでとは思わなかった」
j 「これだったらソキーさんも男で使えるね。」
s 「いや、それほめられても嬉しくないから。」
r 「褒められることはいいことだ。俺なんて、こういうリーダーとかやってるとだな、誰もほめてくれなくて……。おじさん悲しいよ……。」
m 「なーにいってんだか。」
r 「ふ、ふん。まあそういうわけで、演技と言うのはこんなふうに遊んで、いろいろやりながら覚えていくものだ。」
m 「そうだね。一つのことに固執すると、新しいことができなくなる。いろんなことができないと、いざディレクションされたときに対応できなくなる。それは役者として屈辱的なことだから。引き出しは増やしておいた方が思わぬところで役に立つしね。」
y 「なるほど、引き出しを増やす…。」
r 「そうだ。この機会に聞いてみようか。ヨク、お前にとって、演技とはなんだ?」
j 「ロンデュさん、なんかいきなり難しいこと聞くねえ。」
m 「まあでも、大事なことだから。」
y 「演技とはなにか?…うーん、特定の何かになりきることじゃないですか?たとえば、さっきの課題だったら、僕がソキーさんのブリッコという特徴を捉えて、一瞬だけソキーさんになりき」
s (たたいてから)「あたしそんなんじゃないんだけど。あたしのこと分かったようなこと言うのやめてくれる?」
y 「…そっか。ごめん。」
m 「あんたたちは仲良くしなさいよ。」
y 「うーん、それは向うが決めることなんで。」
j 「まあまあいいじゃないですか。物語の世界では、衝突も立派なスパイスと言うことで。それに、あれでしょ?ヨク君がソキーさんをどう捉えてるか、それが合ってるか間違ってるかは別にして、今の彼の答えは、これからのうちを担っていく人に相応しい答えだと思ったよ。」
r 「そうですね。ジャスさんに賛成です。
ヨク、お前の言い方で間違ってはいない。だが、一つつけた市だ。なりきりというと、すでに存在する誰かに合わせることが主流になってしまうが、演じることはそれだけではない。俺たちは、紙の上に踊る文字たち、つまりはまだ生まれていないキャラクターたちを生かす必要がある。キャラクターたちが生きてこそ、役者だ。だから、俺たちは自分じゃない誰かとして、その時間だけは生きていなければいけない。そうだろ?」
y 「…はい!」
r 「だからこそ、俺たちは10回の強化練習の中で、台本とイいう設計図からまだ生まれていない子供たちを知り、そして命を宿す。それができて、初めてステージに立てるんだ。覚えておくように。
よし!なんかしんみりしちゃったから気合の入れ直しだ!
いいな!?みんな!5人で優勝するぞ!」
一同 「おお!!」


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